池田武邦先生の講話

今日はもう一本。

約1ヶ月前の話になりますが、池田武邦先生の講話を拝聴したのでそのことを書きます。
池田先生は、 日本設計の創始者であり、『霞ヶ関ビル』の設計をはじめ、『ハウステンボス』の設計でも有名な方。

日本の高度経済成長の中心的存在として建築業界を牽引されてきた方で、
現在はそのポジションから引退され西彼杵町(邦久庵)にお住まいでいらっしゃいます。

●テーマ:「文化」と「文明」

双方は全く別に位置するもの。

海軍兵として戦争を経験し、文明国(アメリカ)に負けたことから、話は始まります。
文明の差が、国としての力の差だと思い知らされた事は、
時代背景からして仕方がなかったそうです。

焼け野原から始まった復興作業を、造船業などの近代的手法を建築業に応用し、
驚くべきスピードで東京は復興を成し遂げます。

その中の『霞ヶ関ビル』をはじめとする多くの超高層ビルの設計に携わり、
新宿三井ビル』の最上階に本社を構えたある日のこと。

仕事を終えてビルを出たとき、
外に出てはじめて、「今日は雪が降っていた」ことに気づいたそうです。

超高層最上階の完璧に空調管理された快適なオフィスの中。
それは、自然界と完全に遮断された空間。

- 自分の進んでいる道は、どこか間違っていたのではないのか…。

そのときの雪に何とも言えない心安らぐ気持ちを覚え、
その後の設計のテーマとして「環境」「文化」を常に意識されたそうです。

・今日の日本は「文明」が「文化」を覆い尽くし破壊しているのではないか。
・双方は全く別のものでありながら、対等な位置になければいけないのではないか。
・そもそも「文明」によって国としての優劣が付くこと自体が無意味なのではないか。

そして、超高層から邦久庵へ。
長年の建築人生で行き着いた結論が、現在の茅葺屋根の家なのだそうです。

1時間を超える講話も、建築という枠を超えて考えさせられる部分が非常に多く、あっという間でした。

今年で86歳になられるそうですが、年齢を感じさせないお元気ぶりで、このような講話を各地でされていらっしゃるそうです。

また機会があれば是非参加させていただきたいですね!